「フッ素って毒なんでしょう?」「子どもの頭に悪いって見たんですけど…」
このところ、SNSや動画で、フッ素を心配する投稿を見かけることが増えました。お子さまのことなら、なおさら気になりますよね。
先にお答えすると、心配される話の多くは、「どのくらいの量か」という大事な部分が抜けたまま広まっています。今回は、よく見かける2つの話を、公の資料に戻って確かめてみます。福岡市東区千早のチロル歯科です。
フッ素が虫歯を防ぐしくみや、年齢ごとの歯みがき粉の量は、11月3日の記事にまとめています。今回はその続きとしてお読みください。
「フッ素は毒だから、口に入れないほうがいい」
お薬でも、ふだん口にしている食べ物でも、とりすぎれば体に負担がかかります。フッ素も同じで、「毒か、毒でないか」ではなく、「どれだけの量を、どのくらいの期間とるか」で考えるものです。
フッ素は、お茶や海産物など、ふだんの飲み物や食べ物にも含まれています。[1]日本の水道水にも「1リットルあたり0.8mg以下」という基準が決められていて、濃さが管理されています。[2]
歯みがき粉や歯科医院で使うフッ素にも、学会が年齢ごとに量と濃度の目安を出しています。[4]この目安を守って使うことが前提です。とりすぎたときに起こることも、前回の記事でご紹介しています。
SNSで見かける「フッ素は子どもの知能に影響する」という話
この話のもとになっているのは、主に海外の研究です。2024年、アメリカの国家毒性プログラム(NTP)は、たくさんの研究をまとめた報告で、フッ素を多くとっている子どもほど、知能指数(IQ)が低い傾向がみられると、「中程度の確信度(moderate confidence)」で結論づけました。[3]
ただし、ここで示されたのは「関係がみられる」ということです。人を対象に観察した研究をまとめたもので、「フッ素が原因で知能が下がる」と確かめたものではありません。また、報告の結論は知能指数との関係についてで、「フッ素が脳にたまる」ことを示したものではありません。[3]
報告が「多い量」の例として挙げているのは、飲み水に含まれるフッ素の濃さが、WHOの飲み水の目安(水1リットルあたり1.5mg)を超えるような場合です。[3]これは「1日に何mgとったか」という量ではなく、水の中の濃さです。研究では、飲み水に含まれるフッ素の濃さや、尿の中のフッ素などを手がかりに、体へのフッ素の曝露量を推定しています。[3]
体に入るフッ素は、主に飲み水・食べ物・飲み物・歯科用品から来るとされています。[3]この報告は、こうした暮らしの中のフッ素と知能の関係を調べた研究をまとめたもので、歯みがき粉や歯科医院でのフッ素塗布だけを取り出して調べた報告ではありません。
一方で、この報告は、歯みがき粉や歯科医院で使うフッ素の安全性を確かめたものでもありません。フッ素の虫歯予防の効果も、この報告では扱っていないとされています。[3]歯のためにフッ素を使うときは、学会の目安[4]どおりの量と濃度で使うことが大切です。
数字が2つ出てきたので、整理しておきます。0.8mgも1.5mgも、水1リットルの中に含まれるフッ素の濃さで、1日に体に入る量ではありません。0.8mgは、日本の水道水に決められた上限の基準で、水道水はこれ以下にすることになっています。[2]1.5mgは、WHOが飲み水の目安としている濃さで、NTPの報告は、飲み水がこれを超えるような場合を「多い量」の例に挙げています。[3]日本の水道水の上限は、この目安より低く決められています。ただし、もっと低い濃さなら影響がないと確かめられたわけではなく、この点は報告でも、さらに研究が必要とされています(このあとでご紹介します)。[3]
また日本小児歯科学会は、1歳と3歳のお子さまを例に、食べ物や飲み物からとる分に、目安どおりの歯みがき粉の分を足しても、1日にとってよいとされる量には届かないと計算しています。[5]
なお、同じ報告では、大人の知能への影響については「確信度が低い」とされ、もっと少ない量で子どもの知能に影響があるかは、さらに研究が必要とされています。[3]研究は今も続いているため、新しい資料が出たら、このブログでもお伝えしていきます。
気になる投稿を見かけたら、ここを確かめてみてください
フッ素にかぎらず、健康の話は、心配をあおる投稿ほど広まりやすいものです。読んだあとに、次の3つを思い出してみてください。
- 量の話が出てくるか:「どのくらいの量を、どのくらいの期間」とった場合の話なのかが書かれていないときは、そのまま自分に当てはめないほうがよいことがあります。
- 何を調べた話か:飲み水の話なのか、歯みがき粉の話なのか。同じ「フッ素」でも、とり方と量がまったく違います。
- どこから出た情報か:学会や国の機関など、もとの資料が示されているか。投稿した人の言葉だけで終わっていないか。
それでも迷うときは、ひとりで決めずに、かかりつけの歯科医院で聞いてみてください。「こんな投稿を見たんですけど」と画面を見せていただくだけでも大丈夫です。
チロル歯科でのフッ素
チロル歯科では、お子さまの虫歯予防や、大人の方の定期検診のときに、フッ素塗布を行っています。使う濃度や量は、そのつどご説明しますので、気になることはその場でお聞きください。
「やっぱりフッ素は使いたくない」というお考えも、もちろん大切にします。仕上げみがき、おやつの取り方、シーラントなど、ほかの方法を組み合わせた予防も一緒に考えます。
千早・香椎のあたりで、お子さまの歯みがきやフッ素について気になることがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
チロル歯科
福岡市東区千早5-12-11 ロング21-2F
西鉄「香椎宮前駅」から徒歩1分
ご予約は、画面下部の「Web予約」ボタンからどうぞ。
ご不明な点は、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。
参考資料
- 日本歯科医師会 テーマパーク8020「フッ化物」 https://www.jda.or.jp/park/prevent/index05.html
- 環境省「水質基準項目と基準値」(フッ素及びその化合物:フッ素の量に関して0.8mg/L以下) https://www.env.go.jp/water/water_supply/kijun/kijunchi.html
- National Toxicology Program(米国国家毒性プログラム). NTP Monograph on the State of the Science Concerning Fluoride Exposure and Neurodevelopment and Cognition: A Systematic Review(2024年8月) https://ntp.niehs.nih.gov/go/mgraph08abs
- 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会(4学会合同)「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」(2023年1月) https://www.jspd.or.jp/recommendation/article19/
- 日本小児歯科学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」の補足版(一般の皆様向け)(2023年2月) https://www.jspd.or.jp/recommendation/article20/